本間宗久~相場三昧伝

本間宗久~相場三昧伝を読む


米本間宗久は約290年前の享保9年、山形の酒田に生まれ、堂島の米(コメ)取引で連戦連勝、その売買の鮮やかさは相場の神様といわれた。

その宗久が残した秘伝の書(三昧伝)は、現代の株式市場でも非常に参考になると思うので、特に役立ちそうな章を抜粋して紹介します。

太字は私が勝手に付けた題名です



第一章 相場は最初の踏み出しが大切。
米商いは踏み出し大切なり。踏み出し悪しき時は決して手違いになるなり。又商い進み急ぐべからず、急ぐ時は踏み出し悪しきと同じ。売買共、今日より外、商い場なしと進み立ち候時、三日待つべし。是伝なり。米の通いを考え、天井底の位を考え売買すべし。是三位の伝なり。天井値段底値段出ざる内は幾月も見合わせ、図にあたる時を考え、売買すべし。商い急ぐべからずとは天井値段値段を見ることなり。天井底を知る時、利運にして損なきの理なり。利運の米は強欲思わず。

第二章 下げ相場は月初めに強く、月末に弱くなる。
下がる米は月頭に強く、月末二十九日晦日迄下がるものなり。上げ相場の通いは月頭弱く、月末強く急上げの方なり。

第三章 人々が西に走れば、我は東に向かう。(売り)
米、段々上がるとき、諸国不時申し出し、大阪相場も加え、跡も引き上げ候沙汰、御蔵米など申し立て、なおなお上げ、人気も強く、我も買い気に付き候節、心を転じ売り方に付候事肝要なり。是すなわち、火中へ飛び込む思い切り、一統騒ぎ立つ節は、人々西に走らば、我は東に向かう時は極めて利運なり。

第四章 皆が弱気の時は、心を転じ買いに入る。(買い)
米段々下げ、上方相場替わること無く、諸国並びに最上払い物沢山の風聞、人気も揃い弱く、何程下がるも知れ難く、我が考えも弱かるべしと思う節、心を転じ買いに入るべきなり、この思い切り、海中へ飛び入る心持ち、はなはだ成りにくきものなれども、其の節疑いの気を生ぜず買うべし、極めて利運なり。下げと見込む時、思い入れの通り下がるものなれば心易きものなれども、人気下がると片寄る時、かえって上げるもの故、考えに及ばざるなり。上げも同断、すなわち海中に飛び込む心待ち、極意なり。

第五章 底値保ち合いは反騰近し。
冬中より、正二月頃迄底値段にて保ち合う米は、三四月より、五六月決して上がるなり。

第六章 急激な相場には機敏な対応を。
急に下げ、急に上がる相場は天井底の日限定まらず、見計らいを取りて仕舞うべし。

第十章 抵抗線を意識した売り・買いのタイミング。
新商い始めてより、段々引き上げ、大騒ぎ出て、天井値段に成り、其の日二俵三分迄出て行き当たり、その日の内に狂い、二俵二三分迄返す、この日の二俵三分に心を付け考うべし。この米、又一両日のうちに二俵半六分迄通うものなれども、二俵三分迄引き立つ勢いなく。クラリ三俵台へ返すものなり。ここにて売り込むなり。急に二俵三分迄引き上げ候米故、三四俵の内は人気張り詰めおる故、四俵台へ下がる時は又々三俵へ買い戻すものなれども、自然と買い手なく、五六俵迄下がるなり。この時、米を考え買いに入るるものなり。極めて三俵台へ上がるものなり。是大通いなり。次の月二俵三分をうち越し一二分とも上がらば油断なく買いに入るべきなり。又次の月、三俵位二俵六七分に上げ止げ留まり候はば、思い入れに売り込むべし。これ三位の秘伝なり。

第十四章 相場の高下は天性自然のこと。素人が安易に手を出すと危険。
米の高下は天性自然の理にて高下するものなれば、極めて上がる下がると定め難きものなり。この道不案内の人は迂闊にこの商いすべからず。

第二十一章 保ち合いが下放れたとき調子にのって売りのせるな。
皆が売っている買いにくい時がチャンス。ただし手早く利食い、見切ること。 右保ち合いの時、少々下げ目に成る時、かねて売り方の人は図に当たると心得、なおなお売り込み、買い方の人もここぞと売り逃げ、かえって売り過ぎ致す心になり、我先我先と売り込み候故、なおなお下がるなり、この時買うべし、極めて利運なり。はなはだ買いにくしきものなれども、買うべきなり。数年のものも、後悔多し。通いの商いは十俵高下を的にし手早に見切ること第一なり。

第二十二章 出遅れた時は冷静に時期をまて。
米買うべしと見込み候時、二俵方も引き上がる時は、買いおくれじと心得、かえって売り方になることあり。はなはだ誤りなり。買いおくるる時は唯買い場を待つべし。

第二十五章 利益は伸ばせ。簡単に利食いをしない。
底を見極め買い付け、余程の利分付き候節、相場、保ち合い候か、又少々引き下がることあり。その節利足勘定等致し、先達上げの節売り返さざるを思うことあり。はなはだ心得違いなり。底を買い出す時は落ち引きなき前に、決して売らざるものなり。底の買い引き上げ、落ちになる迄買い重ねるものなり、心得べし。

第二十七章 見込み違いは、難平をせず手仕舞って休め。
不利運の節、売り平均買い平均、決してせざるものなり。思い入れ違いの節は早速仕舞い、四~五十日休むべし。十分仕当たる商いにても、商い仕舞い候後は四~五十日休み、米の通いを考え、三位の伝に引き合わせ、図に当たる時を考え又仕掛くべし。何程利運を得てもこの休むことを忘るる時は商い仕舞いの時は極めて損出ると心得べし。但し、商い仕舞い休むというは、何心なく休むにあらず、その気の強弱を離れ、日日通い高下を油断無く考うべきなり。又前年売り方にて利運する時は又々強気に張り詰めるものなれども、これ又前年の気をサッパリ離れ、その時その年の作の様子、物の多少、人気の次第を考うること第一なり。

第二十八章 利食い千人力。儲けたら休め。
商い利運仕当たる時、先ず大概に致し、留むるものなり。その節一両日休むべし。この休むことを忘るる時は、何程利運に向きても、商い仕舞いの節は決して損出べし。勝ちに誇り、百両の利は二百両取る気になり、千両二千両の気移り、欲に迷うて見切りかね、損出るなり。これ欲より出で迷うなり。不利運の時はなおもっての事なり。その時の見切り大切のことなり。慎み心得べし。

第三十一章 十人が十人片寄る時は、相場は逆になる。
相場、二三ヶ月も高下なく、又通いにておる時は、十人が十人退屈し、強気の人も弱気に赴き、売り方の人は図に当たると心得え、なおなお売り込み、その後決して上がるものなり。その節さてこそと弱気強気とも一つに成り、一度に騒ぎ立て買い返す故、俵飛ばし急上げになるなり。十人が十人片寄る時は決してその裏来るものなり。考えの通りに来るものなれば心易きものなれども、右様には来たらず、考えに及ばざるなり。陰陽自然の道理なり。

第三十六章 相場は天井をつけるのに3年、底値をつけるのに3年かかる。
天井値段、底値段、三ヵ年続くものとあり。このこと天井値段計りと思うべからず。底値段も三年続くなり。常の年にも有るなれば、能く能く気を付くべし。

第三十七章 下げ相場のときは焦って買うな。
天井を考うる事は百俵以上の的あり。底を考うることは百俵下げを的にすれども、その時の模様に迷うことあり。下げかかる時は十日十二日十三日も下がるもの故、能く能く見合わせ、下げを待ち買い入るべし。丑の日、不成日、天一、八専、此の日多くは下げ留まりなり。わけて下げ相場の買いは底を買わざれば利浅し。

第四十三章 保ち合い放れは買い増してもよい。
底値段にて保ち合い、上げかかる米は二~三ヶ月に急に天井値段でるなり。その節、百俵上げを的にして買い重ねて善きなり。

第五十一章 二日待つべし。
此の米是非、是非上がるべし、今日中に買うべしと進みたち候節、二日待つべし。是非、是非下ぐべしと売り気進む時は、是又、二日待つべし。是極意の秘伝なり。すべて、天井値段の時に成っては、見計らい第一なり。天井値段出る時は、売るべしの心専一なり。底値段の節は買うべしの心専一なり。この心掛け忘るべからず。

第五十四章 自分が強気の時は他人も強気、自分が弱気の時は他人も弱気。
米弱みに見え、頻りに売り気進み立ち候節、三日待ち、気を転じ買い方に付くべし、極めて利運なり。是非上ぐべしと買い気進み立ち候節、是又、気を転じ売るべし。米商いの極意なり。この心忘るべからず。われ強気の節は人も強気と思うべし、われ弱気の節は人も弱気に片寄るなり。上げ詰め下げ、下げ詰め上がる、陰陽自然の道理なる故、考えに及ばざるなり。専ら三位伝に任すべし。


第六十一章 足らぬはものは余る、余るものは足りなくなる。
足らぬものは余る、余るものは足らぬと申すことあり。但し、多きものは諸人沢山と心得、油断して覚悟せず、それゆえ極意不足するなり。不足なる物は人々、油断無く、覚悟してととのへ置く故、極意は余るなり。

第六十二章 人は人、自分は自分。
人の商いうらやましく思うべからず。但し、うらやましく思う時は、その時の相場の位を弁えず、唯うらやましく思う心計りにてする故、手違いになるなり。

第六十三章 感情的になるな。
腹立ち売り、腹立ち買い、決してすべからず、大いに慎むべし。

第七十三章 利が乗っても、いい気になってはいけない。
商い利運に向かう時、勝ちに乗るべからず。百俵上げ近き時は、唯無難に取り留むることを工夫すべし。必ず強欲を思わず、無難に手取りして、商い仕舞い、休むこと第一なり。

第七十四章 底値を確認して買いだしたら、途中のアヤは無視しろ。
底値段を見極め買い出す時は、その間の高下に迷うことなく、立羽を極め、百俵上げまで片買いと心得べし。

第七十五章 浅はかな考えで安易に売買するな。熟慮してから相場に臨め。
わが一分の了見にて商いすべからず。年中、三位の伝に引き合わせ、上がるか下がるかをとくと考え、前広より、段々見合わせ、仕掛け置くべし。買い方、八分の利なり。売り方、二分の利なり。

第七十七章 焦って売り買いするから失敗する。
商い進み急ぐべからず。売り買いともに思い入れ進み候時は、今日よりほか、商い場なき様に思うものなれども、是は功者なき故なり。幾月も見合わせ、通いを考え、たしかなる処にて仕掛くべきなり。無理に天井値段、底値段の考えなく仕掛くる故、手違いになるなり。是、急ぐ故なり。

第七十八章 相場の高下を論じたり、他人に売り買いを勧めてもろくなことはない。
何程心やすき人にも、売り買い進め申すまじきなり。若し、了見違う時は、恨みを得るなり。すべて、相場高下の論致すまじきなり。この道を心得る人は、わが了見を立てず、人の了見にて商いする人はなきはずなり。少々にても図に当たる時は、募り、了見を立てたがるものなり。是第一慎むべきところなり。もちろん、たしかなる高下を見定め、打ち明け人に語り進むる時は、人もその気になる故、二三俵方も利を得る人は、一俵方ならで利運ならざるものなり。たしかなるところを見据え候らわば、人々にかかわらずして、売り買い致すべく候。もっとも世の中に随い、諸国作合い、豊作凶作、上方相場、九州様子、聞き合わせ随分 宜しきなり。存念は決して人に語るべからず、是大極意なり。常々専ら慎むべし。

第七十九章 前年の儲けは忘れろ。
前年、売り方にて利運得たる人はとにかく売り気離れ難く、売り方に向くものなり、以ってのほか、宜しからず。新米出初め候ては、前年の心さっぱりと離れ、その年の作の様子、物の多少、人気の次第を考うること第一なり。まず、秋米は買い方を第一にすべし。それとも算用にも釣り合いにも合わざる値段なるときは、それより了見を致すべきことなり。前年、買い方にて利運致す人も右同断なり。

第八十章 常に相場から目を離すな。
唯々、平日此の米上がるか下がるかを考え、仕掛け申すべきこと肝要なり。

第八十二章 1年中、相場をやっていると利運が遠のく。
一年中、商い手の内にある時は利運遠し。折々仕舞い候て、休み見合わせ申すべきこと第一なり。

第八十四章 本当のチャンスは年三回。
年中の内、両三度より外、商い致すところこれ無きものなり。この米、二三ヶ月も上がる下がる、とくと見きわめ、買い気ならば買い気立て抜くように、その間の高下に迷わず、立羽を定め申すべきことなり。それとも少しにても心もとなきことあらば、幾月も見合わせ、図に当たる頃仕掛くべし。時々、気を転じ候ては利を得ることならざるなり。

第八十七章 軽い気持ちで仕掛けるな。
相場保ち合いの時うっかり慰みに商い仕掛くることあり、はなはだ宜しからず、慎むべきなり。この商い強いて初念の思い入れを離れ難きものなり。よほど玄人ならで、見切りできざるものなり。例えば百両売り付け候て、少々上がる時、最初踏み出しの百両分に念を残して買うことを忘れ、又々売り重ねる心になるなり。段々上がる時はここにて売りならしすべしと売り込む故、自然金高成嵩み、後々は売り返しも買い返しも自由にならず、大事に及ぶなり。付き出し商いを慰みのようにうっかり仕掛ける商いより発するなり。例えば百両分仕掛けるとも容易に心得ざるものなり。とくと米の通い運びを見定め、作割金割等を考え、売買とも付き出し申すべきことなり。




ナビゲーション